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マイナス金利の功罪:経済への効果は限定的 - ウォール・ストリート・ジャーナル日本版

スウェーデン国立銀行(リクスバンク、中央銀行)はマイナス金利政策に見切りをつけた Photo: Mikael Sjoberg/Bloomberg News

―― 筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト

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 次のリセッション(景気後退)が訪れてもマイナス金利を導入すべきではないと考えている米連邦準備制度理事会(FRB)の政策担当者らは、スウェーデン国立銀行(リクスバンク、中央銀行)がマイナス金利政策に見切りをつけたのを見て安堵しているかもしれない。

 しかし投資家らは、ユーロ圏が同国に追随することを期待すべきではない。リクスバンクは19日に政策金利を引き上げて0%に戻した数時間後には、欧州中央銀行(ECB)幹部らの報告書が発表された。以前から発表が待たれていた同報告書は、マイナス金利を強く擁護する内容だった。特に目を引いた主張は「金利のマイナス幅が現状の倍の1%になった場合でも、経済への好影響は経済への打撃を依然上回る」というものだった。

 リクスバンクは、借り入れコストの低下やインフレ率の押し上げなどマイナス金利がこれまで経済に寄与してきたとのECBの考えに同意しながらも、マイナス金利の適用期間が長くなれば有害な副作用が出ると警告している。

 しかし、将来の展望についてECBとリクスバンクのどちらが正しいかは、今後新たにマイナス金利導入の決断を迫られた際に極めて重要となる。これは、FRBにとっても、次の景気悪化局面で金利が再び0%となった場合に再検討を迫られかねない課題だ。

 意見が食い違っているのは、マイナス金利が長期化した場合に何が起きるのかという点についてだ。リクスバンクは19日の金融政策報告の中で、マイナス金利の長期化が広く予想された場合には「さまざまな経済主体の行動が変化し、悪い影響が出るかもしれない」としている。

 マイナス金利に批判的な人々は、その副作用について、次のような説明を何度も繰り返している。銀行は、マイナス金利を預金者に転嫁できない場合、利ざやの縮小に直面する。年金基金や保険会社は、マイナス利回りの政府債の保有を当局から求められ、顧客との約束を果たすのが難しくなる。金利負担ゼロより好条件での資金調達が可能になることで、金融と不動産のバブルを醸成するかもしれない。

 リクスバンクは懸念の詳細には踏み込まなかった。しかし、経済が弱まっていることを認めているにもかかわらず利上げをするほど、その懸念は深刻なのだ。ただし、同銀は債券購入を続けており、今後数年はさらなる利上げを行わないことを約束した。

 ECBの金融政策局長マッシモ・ロスタグノ氏らがまとめた報告書はマイナス金利について、債券購入やフォワードガイダンス、銀行への低金利での長期貸し付けと一緒に複数の利益をもたらすと主張している。

 第1に、報告書は、ゼロの下に限度がないことを示すことで、金利がゼロに達した時に中銀に行動の余地がないという不安を払拭(ふっしょく)すると主張している。

 第2に、マイナス金利―商業銀行が中銀に預ける預金に負担を課すこと―は、「ホットポテト(誰も持っていたくないのですぐに手放す)」効果を生む。銀行は超過準備金についてECBに金利を支払うのを避けるため、資金を貸し出したり、投資したりすることが促される。銀行システム全体としては、マイナス金利の負担から逃れられない。なぜなら、準備金は最終的にECBのところに戻らなくてはならないからだ。しかし、余剰金のある個々の銀行は、以下のことを期待できる。それが債券購入や貸し出しに使われるのならば、それを受け取る人はそのカネをライバルの口座に支払う。すると、ライバルはECBから打撃を受けなくてはならなくなるということだ。

 第3に、研究によれば、マイナス金利のときの利下げは、プラス金利のときの利下げよりも国債の利回りを低下させることが分かっている。一番大きな効果が表れるのは、5年物だ。5年物は固定金利の貸し出しに大きく影響する。その説明はトリッキーだ。どちらかといえばマイナス金利の主張を弱める可能性のあるものは、中銀がマイナス金利の深掘りを試みようとすることは、中銀にとって非常に良くないことのはずだから、金利は長期間低い水準を維持するに違いないと投資家が考える点だ。中銀が平常時に利下げするのは簡単であるため、金利は通常、数年以内により高い水準に向かって回復すると予想される。

 第4に、マイナス金利は、フォワードガイダンスや社債購入など他の政策をより効果的に行う上で手助けとなることが挙げられている。

 最後に、同報告書で使用された想定モデルは、マイナス金利でなかった場合に銀行が得られる利益に比べ、マイナス金利の場合の方が利益が大きかったと結論づけている。これは一見、直観に反した結論のように思われる。なぜなら、銀行の利ざや縮小は、手数料の引き上げやキャピタルゲインなどによって十二分に相殺されるとしているからだ。

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 それを批判することは可能だ。しかし、同報告の方法論の作成に関与した人々にとってさえ、マイナス金利が不透明性や政治的懸念に値するものなのかどうかを明確にするには程遠い状態だ。同報告はマイナス金利がインフレと成長に及ぼす影響を分けようと試みており、マイナス金利は債券購入やフォワードガイダンス、あるいは低金利融資よりも効果は小さく、インフレの押し上げ効果は年間で最大0.07パーセントポイントだとしている。

 こうした小さな額の積み上げも助けになるものであり、同報告は控えめな予想である。しかし、マイナス金利の長期化がバブルを引き起こしたり、あるいは銀行や保険会社、年金基金に打撃を及ぼし始める恐れのあることを考えると、それによって得られるプラス面はわずかであるように思われる。

 筆者はリクスバンクの立場を支持する。つまり、マイナス金利は経済を手助けできるが、マイナス金利の期間が長引けば副作用が拡大する可能性が大きい。したがってマイナス金利は短期間の実験的措置にとどめておくのが最善策である。

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December 23, 2019 at 08:19AM
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