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洗練された「知」の経済へ グリーンスパンFRB元議長 - 日本経済新聞

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 日本経済新聞は1月1日、連載企画「逆境の資本主義」を始めます。約400年の資本主義の歴史を振り返りつつ、その未来を考えます。連載スタートに先立ち、1987年から2006年までFRB議長を務め、物価を安定させ「巨匠」と称されたアラン・グリーンスパン氏に、資本主義について語ってもらいました。

インタビューに答えるグリーンスパンFRB元議長(ワシントン市内)

インタビューに答えるグリーンスパンFRB元議長(ワシントン市内)

「高齢化のコストで資本投下が減退」

資本主義経済は活気が損なわれている。米国だけでなく日本や欧州も同じように成長が鈍化している。だが、それは資本主義そのものの問題ではない。

アラン・グリーンスパン(Alan Greenspan) 1987年から2006年までFRB議長。物価を長期に安定させ「マエストロ(巨匠)」と称された。低金利政策が08年の金融危機を招いたとの批判もあり、自らも「銀行の自己資本不足が原因」と不備を認める。ただ、もともとリバタリアン(自由至上主義)の立場で、なお一段の金融規制には「米国の競争力を損なう」と反対の立場だ。現在もコンサルタント会社を率いる。

統計的にみて生産性が減速している。かつて、人々は死ぬまで働き、退職という概念もなく、社会保障制度もなかった。だが米国では1960年代から本格的に社会保障制度が構築されるようになった。そのコストが民間貯蓄から吸い上げられ、民間設備投資に回るはずのマネーが乏しくなっている。

資本主義経済を支えるのは資本投下そのものだ。米国では社会保障支出が増えるにつれて国内総貯蓄が減少していることがデータで裏付けられており、鏡をみるように資本投下の減退と一致している。それが生産性の低下につながっている。このことからも言えるのは、高齢化社会が進むと、明らかに経済成長を抑圧するということだ。

巨大IT企業分割「成長率の低下招く」

資本主義に問題がないわけではない。米国で所得格差が拡大しているのは紛れもない事実だ。その理由は我々がますます洗練された知識社会に向かっているからだ。

米国で最も急速に成長している主要産業はハイテクだ。こうした経済効率の高い企業からは尋常ではない規模の報酬がもたらされる。ハイテク分野をつかさどるのに必要な非常に優れた知能のある人材には、より分厚い報酬が支払われる。それが格差拡大の要因だ。

データを示しながら資本主義の行方を語るグリーンスパンFRB元議長(ワシントン市内)

データを示しながら資本主義の行方を語るグリーンスパンFRB元議長(ワシントン市内)

望ましいことではないのだが、資本主義は自然力学として所得格差を生み出す。難しいのは、人間はすべて同じではなく、知能指数(IQ)が生まれながらにして高いかどうかだけでも不平等が生じてしまう。所得格差を避けるには、賃金と物価を厳格に制御するしか手段がない。

フェイスブックのような巨大IT(情報技術)企業には分割論もある。だが、こうした企業群が不安定になれば経済の効率が落ちて成長率自体も低下するだろう。IT企業を分割して力を落とすことはできても再び引き上げることはできない。政治的には魅力的なアイデアだろうが、決してうまく機能しない。

世界では社会主義や全体主義など資本主義以外のシステムが試されてきた。だが、いずれもモノとサービスの世界では歴史的に成功に近づいたとすら言えない。

「資本主義は型破りなイノベーション生む」

資本主義で成功してきた米国は依然としてイノベーションを生み出し、成長を続けている。資本主義は今も最善の経済システムなのかとの問いへの答えは、「イエス」だ。資本主義は型破りなイノベーションを生む。経済が最も効率的に機能する基本メカニズムだ。

中国が歴史的に前例のない驚異的なペースで成長してきたのは、社会主義から資本主義に衣替えしてきたからだ。中国の人はこういう言い方を好まないだろうが、毛沢東氏以降の中国で起きたのはそういうことだ。

私が政策当局者だった当時、朱鎔基氏(元首相)とは個人的にも親密な友人で頻繁に会っていた。彼は常にこう聞いてきたものだ。「中国経済を米国のようにするにはどうすればいいのか」と。それは真剣な問題で、私は折に触れて経済改革を助言した。

「中国は共産党関与が強まるほど成長力を失うリスク」

鄧小平時代以降、習近平(シー・ジンピン)体制になるまで中国は10年おきに政権交代し、より自由化を進めてきた。中国の国家資本主義は朱鎔基氏が自由化に取り組んだ90年代タイプのものであれば西側を追い越すかもしれない。それは基本的には資本主義システムそのものだからだ。

だが、共産党の関与が強まるほど成長の力は失われるリスクがある。言論や行動の自由が損なわれた社会では、イノベーションは生まれにくい。

その中国と米国の貿易戦争は、両国をそろって敗者にするだろう。関税は自国民の負担で税金と同じ。民間投資を損なう。

私が懸念するのは経済面での関税の役割がほとんど理解されていないことだ。米国は建国当初、お金を集める手段がなかったために関税政策を敷いた。よい手段だったというわけでは全くない。課税手段を持ち合わせていなかったので関税に頼ったのだ。

市場が自由度を失えば失うほど経済成長率は低くなる。それが関税だ。米国と中国のGDPは世界の40%にもなる。貿易戦争で両国経済の拡大が鈍れば影響は極めて大きい。

(インタビューをもとに構成しました。聞き手はワシントン支局 河浪武史)

1月1日 新企画スタート


2020年1月1日に連載を始める新企画「逆境の資本主義」では、様々な課題に直面する資本主義の新たな挑戦を描きます。処方箋を探るべく、取材班は世界各地に足を運びました。専門家へのインタビューや豊富なデータ、現場の映像を交えて、資本主義の行方を探っていきます。

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December 27, 2019 at 09:00AM
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