これからの時代を経済的に困窮することなく生きるには、「経済センス」を磨くことが不可欠です。何が有益で、何が無駄なのか。メリットは? 将来的な期待値は? …経済コラムで多くのファンを持つ久留米大学教授の塚崎公義先生が、身近なテーマを経済学的見地から読み解きます。第2回は、今月末に予定されている(といっても年内は移行期間ですが)イギリスのEU離脱が日本経済にどんな影響及ぼすのかを解説します。
EU各国は、得意分野も産業構造も似ているので…
経済学者は自由貿易が大好きです。お互いの国が得意なものを大量に作って輸出し合えば、両国ともによい生活ができるはずだ、というわけです。これは、理屈の上ではまったく正しいのですが、メリットの大きさはケースバイケースです。
両国の得意分野や産業構造が大きく違う場合、たとえば農業国と工業国が自由貿易をすれば、お互いのメリットは大きいでしょう。しかし、EU各国は先進国ですから、得意分野も産業構造も似ています。
従って、自由貿易のメリットはあまり大きくはなく、それが失われても経済への打撃はさほどでもないはずです。
もちろん、個々の国の個々の産業は大きな打撃を受けるのでしょうが、概ねその分だけ他国の同業者が利益を受けるでしょうから、欧州全体として見れば影響は限定的なものになると想像できます。
たとえば、スコッチウイスキーの輸出が減って英国経済は打撃を受けるかもしれませんが、欧州全体を見渡せば、アルコールの消費量は変わらないはずですから、その分だけフランスのワインメーカーがメリットを受けるかもしれない、といった具合です。
製造業以外でも、たとえば英国の金融業は打撃を受けると言われていますが、その分だけ大陸のどこかに金融市場ができて、金融機関はそこに引っ越すだけでしょうから、欧州全体としては大きな落ち込みはなさそうです。
英国がEUを離脱したからといって、欧州全体の金融業へのニーズが減るわけではないので、どこかで金融サービスが生産されるはずだからです。
場合によっては、それが欧州大陸ではなくニューヨークかもしれません。その場合には欧州にとって打撃でしょうが、そうだとしても世界経済全体を見れば影響は限定的であって、日本経済への影響も限定的でしょう。
短期的な混乱があっても、過度な懸念は不要
移行期間内に関税等々に関する合意が成立せず、「合意なき離脱」になるとすれば、短期的な混乱は発生するでしょう。しかし、過度な懸念は不要だといえます。
まず、欧州企業はずっと前から「合意なき離脱」の可能性を考えて準備をしてきたはずです。仮に準備不足や見落としなどがあったとしても、時とともにそうした問題点は解決してゆくでしょう。
何より重要なのは「EUを離脱するということは、EU加盟前の状態に戻るだけだ」ということです。英国がEUに加盟する前は、英国もEUも特に問題なく経済が運営されていたわけですから、そこに戻るだけなら大きな問題は起きないでしょう。
英国子会社が打撃を受けても、失業するのは英国人
日本企業のなかには、英国に製造子会社を作って欧州大陸向けの製品を生産している所も多いようです。そうした企業はEU離脱で大きな打撃を受けるかもしれません。
しかし、彼らは英国企業です。彼らが生産を減らして社員をリストラすれば、失業するのは英国人です。日本の失業者が増えるわけではありません。
親会社に送る配当が減るので、親会社の利益が多少減るかもしれませんが、それが日本の景気に影響するとも思われません。そもそも日本企業は海外子会社から配当を受け取っても、それを設備投資や従業員のボーナスとして使ったりしませんから。
英国が日本と自由貿易協定の可能性も!?
ドイツの自動車に乗っている英国の消費者は、ドイツ車の輸入に関税が課されるようになると、「それなら日本車を買おう」と考えるかもしれません。スコッチ好きなフランス人は、英国のスコッチに関税が課されるようになると、日本製のウイスキー、あるいは日本の焼酎を買うようになるかも知れません。
さらにいえば、英国が日本と自由貿易協定を結ぶ可能性もあるでしょう。どこの国とも自由貿易を結んでいないと、自国の輸出企業にとって不利すぎるでしょうから、日本に白羽の矢が立つかもしれません。そうなれば、ドイツ車に乗っている英国人の多くが日本車に乗り換えるかもしれません。
まさに、日本にとっては漁夫の利ですね。期待しましょう。
本稿は、以上です。
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塚崎 公義
久留米大学教授
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January 19, 2020 at 03:07AM
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