スティグリッツ教授が説く市場支配の経済学
大手テクノロジー企業が繁栄する一方で、所得格差がかつてないほど拡大している。エリートによる市場の独占を止める手立てはあるのだろうか?(写真:Rhetorica/PIXTA)
グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフトといった巨大テック企業は、驚くほどの利益を上げている。それなのに、アメリカはかつてないほどの格差に苦しみ、多くの市民はイノベーションの恩恵を受けているようには見えない。中流階級の生活は手の届かないものとなってしまい、所得階層の上位1%と残りの99%との間の溝は広がるばかりだ。
ピーター・ティールの驚きの主張
アメリカでは、ごく少数のエリートが経済を支配しており、日増しに増える底辺層にはほとんど資源が行き渡っていない。
ある調査によれば、アメリカ人の40パーセントは、子どもが病気になったり車が故障したりして400ドルが必要になったとしても、それを賄う力がないという。
その一方で、アメリカで最も裕福な3人、ジェフ・ベゾス(アマゾン)、ビル・ゲイツ(マイクロソフト)、ウォーレン・バフェット(バークシャー・ハサウェイ)の資産の合計は、アメリカの所得階層の下位半分の資産の合計よりも多い。
これは、最上層にいかに多くの富が集まり、最下層にいかにわずかな富しかないかを示している。
標準的な経済学の教科書を見ると、競争の重要性が強調されており、政治家もよくそのようなことを口にする。
だが、過去40年の間に経済学的な理論や証拠が積み重ねられ、大半の市場ではおおむね自由競争が行われているという主張や、アメリカ経済はある種の「競争モデル」といえるといった考え方は崩れてきた。
かなり前の時代であれば、アメリカ経済では、なるべく低いコストでなるべくよい製品やサービスを消費者に提供しようとする無数の企業が容赦ないイノベーション競争を展開している、といえたかもしれない。
しかし現在のアメリカ経済では、ごく少数の企業が莫大な利益を独占し、何年にもわたり支配的な地位を悠々と維持している。
テクノロジー業界の新たなリーダーたちはもはや、競争を支持する姿勢さえ見せない。短期間トランプ政権の顧問を務めたこともあるシリコンバレーの大企業家の1人、ピーター・ティールはあからさまにこう主張している。「競争は負け犬がするものだ」。
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January 16, 2020 at 03:35AM
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