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コラム:新型肺炎があぶり出した日本経済「4つの弱点」 - ロイター (Reuters Japan)

[東京 14日 ロイター] - 中国・湖北省武漢市から感染が拡大した新型肺炎が、日本国内にも広がり出そうとしている。ここで問題なのが、日本経済が抱えている「4つの弱点」だ。対照的に米国経済は相対的に安全とみられ、逃避資産としてマネーが流入している。日本国内で感染者が増え出した場合、東京五輪・パラリンピック開催への懸念が浮上するとみられ、一段と個人・企業の心理を冷え込ませかねない。日本は岐路に立たされている。

 2月14日、中国・湖北省武漢市から感染が拡大した新型肺炎が、日本国内にも広がり出そうとしている。写真は2009年8月、東京で撮影(2020年 ロイター)

<高い対中輸出依存度>

13日の米株市場は反落したものの、最高値圏で推移している。一方、日経平均.N225は2万4000円を前に足踏みが続く。この背景には、日本経済が抱える「4つの弱点」が強く影響していると分析している。

1つ目の弱点は、高い中国依存度だ。2019年の輸出総額76兆9275億円のうち、対中は14兆6826億円と全体の19%を占め、国別では米国に次いで2位。商品別では、一般機械、電気機械の割合が多い。

新型肺炎で中国の製造業の生産再開が大幅に遅れており、この分野の企業の業績下振れが今後、鮮明になるとみられる。

実際、1月の工作機械受注は前年比35.6%減の808億円と単月としては7年ぶりの低さを記録。新型肺炎の影響が本格している2月は、さらに大きく落ち込むとみられている。

<30%占める中国観光客の急減>

2つ目は、足元の日本経済を支えてきたインバウンドへの大きな打撃。日本旅行業協会の推計によると、1月27日から3月末までに、中国人旅行客約40万人分の各種予約がキャンセルとなる見通しだ。

また、昨年2月─5月の中国からの旅行者数は289万7700人に上っており、5月の大型連休のころに新型肺炎の影響が下火になっていなければ、観光に関連するビジネスは幅広く打撃を受けることになる。

2019年の中国からの観光客は、前年比14.5%増の959万4300人と全体の30%を占めていた。韓国が反日感情の高まりで前年比25.9%減の558万4600人と落ち込んだ分を相殺した形になっていただけに、インバウンド関連の宿泊、小売関連の企業は、大幅な売り上げ減に伴う資金繰りの悪化にも備える必要が出てくる。

<消費増税でふらつく個人消費の足元>

3つ目には、昨年10月の消費増税後の個人消費のパワーダウンを挙げたい。典型的なのは自動車販売で、昨年12月の新車販売台数は前年比11.0%減の38万7525台にとどまった。11月が同12.7%減、10月が同24.9%減とマイナス幅が縮小しているものの、反転の兆しは見えない。

12月の全世帯消費支出は前年比4.8%減と大きく落ち込んだ。暖冬や少なかった休日日数を政府は要因としているが、昨年10月─12月と実質賃金が3カ月連続で減少していることも作用しているのは間違いないだろう。

つまり、今の個人消費の状況は、個人の体調に例えると、体力が弱っているところに強い感染力のある新型肺炎のリスクに直面していると言える。

総務省も消費支出の動向に関連し、新型肺炎の影響で人混みを避けるようになれば影響が出てくると警戒感を強めている。14日の段階で、国内での感染者が増えるリスクが高まっており、3つ目の弱点の影響力は強まる様相を見せている。

<GAFAのいない日本経済>

4つ目の弱点は、この10年間で日本経済と企業の新陳代謝が遅れた結果、米国では新型肺炎発の株安への防波堤となっているGAFAのような企業が、日本には存在しないことだ。グーグル(GOOGL.O)、アマゾン(AMZN.O)、フェイスブック(FB.O)、アップル(AAPL.O)などのプラットフォーマーの株式は、安全資産として世界の投資家のマネーの受け皿になっている。

一方、日本では政府発注の基盤システムをアマゾン傘下のクラウド企業に発注する調整に入ったと報道されるなど、IT(情報技術)システム分野で今、最も「収穫期」にあるクラウドに関して後れを取っている。

今年に入って、海外勢が東京市場でナスダック買い/日本株売りの注文を大々的に展開してきたとの話をよく聞くが、「さもありなん」と思わざるを得ない。

<国内感染拡大に備えを>

ここに挙げた4つの弱点を抱える日本経済は、中国の新型肺炎の患者数増が止まらず、拡大期が長期化すればするほど、ダメージが蓄積されていく構造になっている。

そこに国内で湖北省に関連しない感染者が複数、発生するという事態に直面してしまった。政府は、国内流行とする疫学的情報が現段階で集まっていないとの見解を示しているが、日本国内が「感染拡大期」に入る前兆と警戒感を強めている感染症の専門家も少なくない。

水際対策に重点を置いた現在の政策から、国内での重症化やパンデミックの抑制を最優先にしたシフトチェンジを求める声も出ている。

もし、国内での感染者が急速に増加した場合、7月からの東京オリンピック・パラリンピック開催への影響を考えざるを得ない。国際オリンピック委員会(IOC)がどのような判断を下すのかにかかっているが、仮に延期ないし中止が決定された場合、現在の想定を超える大きな影響が各方面に波及することは間違いない。

ここから先の日本政府による感染症対策のスタンスが、日本の未来を大きく左右することになる。

(編集:田中志保)

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