□第一生命経済研究所・西●徹
昨年末に湖北省武漢市で発見された新型コロナウイルスは、その後中国全土で感染が拡大したため、中国政府は封じ込めに向けた都市封鎖など強硬策に動いた。ただし、その代償として1~3月の実質国内総生産(GDP)成長率は前年同期比6.8%減と四半期ベースで初のマイナス成長となるなど、景気に大きく下押し圧力が掛かった。足元では感染収束を受けて経済活動の正常化が進んでおり、景気下支え策の効果もうかがえる。一方、景気回復の足取りは依然として重さがうかがえるなど、先行きの道筋は見通しが立ちにくい状況にある。
中国国内での新型コロナ感染者数は、政府公表ベースでは3月以降2桁台で推移する展開が続いたため、多くの都市で封鎖措置が解除されるとともに経済活動が再開された。さらに、4月上旬には発生当初における感染拡大の中心地となった武漢市の都市封鎖も解かれるなど、経済活動の正常化に向けた動きが進んでいる。なお、欧米など先進主要国においても新型肺炎拡大に伴う都市封鎖措置の解除を模索する動きがみられるなか、中国はこれらに先んじる格好となっている。その意味では、中国は「ポスト・コロナ」の世界経済における「フロントランナー」とみることもできる。
◆外需に重しの懸念
ただし、経済活動の正常化に向けた動きは前進しているものの、景気回復の道のりは依然として見通しが立たない状況にある。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)に伴い世界経済の減速が避けられない上、感染拡大の中心は欧米主要国から新興国にシフトしている。新興国は総じて医療インフラが脆弱(ぜいじゃく)であり、今後季節が冬に転じる南半球で感染が拡大すれば、事態収束が難しくなる可能性もある。結果、中国経済にとっては外需の重しとなる懸念がある。さらに、海外からの感染逆流による「第2波」も懸念されるなど、景気回復は容易でないと判断できる。
なお、経済活動の正常化に向けた動きを加速させるべく、地方政府レベルでは補助金支給や商品券配布といった景気刺激策が実施されているほか、インフラ関連など公共投資の進捗(しんちょく)促進の動きも進められている。一部にはこうした対策の効果が表れる動きが出ており、4月の自動車販売は前年同月比4.4%増と約2年ぶりに前年を上回る伸びに転じている。中国の自動車販売をめぐっては2017年に過去最高となったものの、その後は米中摩擦に伴う雇用・所得環境の悪化を受けて伸び悩む展開が続いてきた。さらに、年明け以降は新型肺炎拡大に伴う事実上の外出規制により一段の下押し圧力が掛かった。ただし、低迷が続いた自動車需要は政策的な後押しによってようやく底打ちを果たしたと捉えられる。
しかし、4月の内訳をみると、商用車の販売台数は同31.6%増と前年を大きく上回る一方、自家用車は同2.6%減と引き続き前年を下回る伸びにとどまるなど対照的な状況にある。中国人民銀行(中央銀行)による金融緩和や中小・零細企業を対象とする資金繰り支援などを受けて、企業部門を取り巻く状況は最悪期を過ぎつつある。その一方、足元の企業マインドの動きをみると雇用調整を示唆する展開が続いており、家計部門を取り巻く状況は回復にはほど遠い状況にある。さらに、世界経済の減速による外需鈍化懸念に加え、新型肺炎を理由に米中摩擦が再燃する懸念も高まるなど、家計部門をめぐる不透明感の払拭は難しい状況にある。
◆くすぶる過剰債務
22日に開幕する全国人民代表大会(全人代)では、景気下支えに向けて追加対策が公表されるとの見通しが高まっている。仮にいわゆる「リーマン・ショック」直後と同様な大規模景気刺激策が打ち出されれば、それによって中国景気はV字回復を遂げる可能性はある。その一方、大規模対策が過剰債務問題の元凶となっていることを勘案すれば、景気回復を果たした後の中国経済が抱える課題は一層解決が困難なものとなる可能性もある。全人代でいかなる景気対策が打ち出されるかは、これまで以上に重要になろう。
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【プロフィル】西●徹
にしはま・とおる 一橋大経卒。2001年国際協力銀行入行。08年第一生命経済研究所入社、15年から経済調査部主席エコノミスト。新興国や資源国のマクロ経済・政治情勢分析を担当。42歳。福岡県出身。
●=さんずいにウかんむりに眉の目が貝
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