米エアビーアンドビーはホテルでは得られない体験を売り物に成長した
【シリコンバレー=奥平和行】民泊仲介大手の米エアビーアンドビーは19日、新規株式公開(IPO)を申請したと発表した。同社は米国を代表する有力スタートアップ企業の一社で、シェアリングエコノミーの先導役にもなった。新型コロナウイルスの感染の影響が続くなか、IPOと観光産業の先行きを占う試金石となりそうだ。
上場申請書類を「秘匿扱い」として提出しており、売上高や利益といった経営情報は開示していない。IPOの時期についても明らかにしていないが、年内にも上場するとの見方が出ている。
同社は2008年に発足し、空室の所有者と旅行者をマッチングする事業を中国を含む世界各地で手がけている。ホテルや自治体などとの摩擦を生む一方、コスト競争力と多様な体験が利用者の支持を集めた。アンドリーセン・ホロウィッツやセコイヤ・キャピタルといった米国の有力ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受けている。
米調査会社のCBインサイツによると現在の企業価値は180億ドル(約1兆9000億円)で、米国のスタートアップとしては4番目の規模だ。ホテル大手の米ヒルトン・ワールドワイドの時価総額、230億ドルの8割近い水準となる。
19年には20年に新規上場する方針を公表していたが、新型コロナの感染拡大で移動が世界的に難しくなり、利用が急減した。4月までに増資と借り入れで20億ドルの運転資金を確保する一方、5月には全社員の約25%に当たる1900人を削減するなどコスト構造の見直しを進めてきた。
6月に日本経済新聞の取材に応じたネイサン・ブレチャージク最高戦略責任者は国内旅行に伴う予約が世界全体で前年を上回る水準まで回復するなど、近場への旅行を中心に需要が回復しつつあると説明した。年内のIPOについても「当初からの考えであり、市場環境が回復し次第、上場する準備を進めている」と明言していた。
米国では有力データ分析企業のパランティア・テクノロジーズも7月、米証券取引委員会(SEC)にIPOを申請したと発表している。19年5月に上場した配車サービス大手、米ウーバーテクノロジーズの株価が低迷してユニコーンと呼ぶ大型スタートアップへの懐疑的な見方が広がったが、両社のIPOはこうした懸念を払拭する転機としても注目を浴びている。
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August 20, 2020 at 05:46AM
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