「欲望の資本主義」が迫る「人の心に巣食う習性」

「ストーリーは、まるでコロナウイルスのように広がります」と語るシラー(写真左)と「経済をコントロールしても、現代の複雑な社会の問題は解決できません」と語るトッド(写真右)(写真:NHK)
コロナで格差拡大が顕在化している中、日本と世界はどこへ向かっているのか?
本書では、ケインズの言葉などを引用しながら、人間の性(さが)に迫り、資本主義の本質を論じている。「やめられない、止まらない」資本の自己増殖の中、見直すべきは何なのか? 資本主義の行方をどのように考えればよいのか? 番組を企画したNHK「欲望の資本主義」プロデューサーの丸山俊一氏に聞いた。
長期化するコロナの中で響く「ケインズの言葉」
「自己の環境に慣れてしまう能力というものが、人類の顕著な一特性である」
長期化するコロナ禍、度重なる緊急事態宣言疲れの中、緊張感を失いかけた人々への皮肉ともとれそうなこの言葉。だが最初に記されたのは、およそ100年前のこと。発言の主はジョン・メイナード・ケインズ。言うまでもなく20世紀を代表する経済学の巨人だ。
第1次大戦後、戦勝国たるイギリス、アメリカ、フランス3国は、パリ、ヴェルサイユでの講和会議において、敗戦国ドイツに対して法外な債務を科そうとした。そのとき、イギリス代表団の一員だったケインズが憤慨、公憤にかられて執筆した「平和の経済的帰結」は、この冒頭の一文から始まる。そしてこう続く。
「西ヨーロッパが過去半世紀のあいだそれによって生活してきた経済的組織のもつ、極度に異常で、不安定な、錯綜した、頼りにならぬ、一時的性質を、心底から理解している者は、われわれのうちのよくよく一部でしかない。(中略)われわれは、この砂のように脆い、見せかけの基礎のうえに立って、社会の改善を計画し、政治綱領を飾りたて、それぞれの怨恨や個別的野望を追い求め、われわれにはヨーロッパ家族諸成員間の内輪もめを、鎮めるどころか、つのらせていけるだけの十分な余裕があるのだ、と感じている」
(『ケインズ全集2 平和の経済的帰結』早坂忠訳」)
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September 18, 2021 at 05:00AM
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