巨大経済圏構想「RCEP」が頓挫した深刻な内情
今年11月に開かれたRCEP首脳会議で、各国首脳と握手を交わすインドのナレンドラ・モディ首相(左から2人目、写真:AP/アフロ)
「インドは現状では、この協定には加われない。ガンジーも、私の良心も、参加を許さない」
インドのナレンドラ・モディ首相は11月4日、タイ・バンコク近郊で開かれたRCEP(東アジア地域包括的経済連携)交渉参加国の首脳会合で、建国の父まで引き合いに出して見得を切った。
不参加の理由は「インドの労働者、消費者の利益に反する」ということだが、すぐそばにいた安倍晋三首相は苦り切ってその演説を聞いたことだろう。
RCEPの生みの親は安倍首相だった
本来なら、この場は足かけ6年にわたる交渉がゴールに近づいたことを確認するセレモニーになるはずだった。
参加国が共有する「2019年内の妥結」という目標は難しくとも、2020年2月までには妥結を実現できる――。これが外務、経済産業、農林水産、財務の4省からなる日本政府代表団のコンセンサスであり、安倍首相も「11月4日の首脳会合では一定の合意に達する」というシナリオを想定してタイに向かったはずだ。
RCEPはASEAN(東南アジア諸国連合)10カ国と日中韓、さらにインド、オーストラリア、ニュージーランドの16カ国が進めているメガFTA(自由貿易協定)構想だ。2013年に交渉が始まり、実現すれば世界の人口の半分、GDPで3分の1を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。
実は安倍首相はRCEPの生みの親とも言うべき存在だ。ことの始まりは、中国が日中韓とASEANの13カ国による自由貿易圏づくりを提唱した2005年。これに対抗し、日本は2007年にインド、オーストラリア、ニュージーランドを含めた16カ国での交渉を提案したのがRCEPの原型である。第1次政権当時の安倍首相が、急激に影響力を高めていた中国を牽制するためにこれらの3カ国、とくに人口大国であるインドを加えることに意欲を示した。
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November 16, 2019 at 03:10AM
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