ここ数年、家庭用の食用油市場は活性化しており、19年度の上期もそのトレンドは継続している。家庭用食用油市場は約790億円、10程度の拡大となった。特にオリーブ油とアマニ油は2ケタ増で、市場拡大をけん引している。業務用関係は、外食がこの上期も総じて1%~3%増で推移し、中食・総菜も引き続き堅調だが、市場拡大の一方で、人手不足など課題も抱えている。
当初、上期の搾油採算は前年に比べ悪化するとみていたが、10~11月くらいまでは比較的落ち着いた状況で推移した。しかし、年明け以降の搾油環境は大幅に悪化する見込みで、販売面では引き続き、付加価値商品の拡販、コストに見合った適正価格の形成に取り組むことが必要不可欠となっている。
汎用油は、キャノーラ油の他に、「日清ヘルシーオフ」や「日清キャノーラ油ナチュメイド」などの構成比を高め、収益の安定化に取り組んでいる。
業務用では外食、中食市場で課題となっている人手不足、作業性の改善への提案として、「日清吸油が少ない長持ち油」や、ピロー容器の提案強化を行っている。さらに、「炊飯油」や「炒め油」などの機能性を重視した製品も好評であり、今後も提案を継続していく。
〈家庭用は付加価値品のさらなる拡販、業務用は課題解決に貢献する提案強化〉
20年も引き続き、家庭用では付加価値品のさらなる拡販と汎用油における市場の安定化とともに、業務用ではニーズを協働して発掘し、課題解決に貢献する提案を強化していく。
J‐オイルミルズとの業務提携は、長期的な視点で事業の成長性や安定性を考えて行うものだ。率直なところ、「驚いた」という声が一番多い。そして、こうした時代の中では、好意的に受け止めていただける得意先が多いと感じている。今後、中長期の視点に立ったあるべき姿について協議を重ねていきたいと考えている。
――加工油脂領域はいかがですか
おいしさや機能性の高さが評価され、国内のマーガリン、ショートニングや、大東カカオ社のチョコレートも着実に伸長している。ISF社については、19年も継続した顧客サービスの充実に加えて、マレーシアリンギット安・米ドル高、パーム油相場の軟調推移により、ベースマージンが好転し、収益改善につながっている。今後もより一層、機能性や安全・安心をベースに取り組みを継続する。
また、好調な需要を受けて精製能力の増強を図っており、新規顧客への供給も順次可能になっている。特にアセアンにおける取引の新規開拓になどを通じて、今後の着実な数字の積み上げにつなげていく。
チョコレート用油脂の市場は世界的に見て拡大傾向にあるとともに、アセアンにおけるチョコレートの需要も成長している。チョコレート事業と、それを支えるチョコレート用油脂はポテンシャルがあり、拡大に向けた準備を着々と進めつつある。
ISF Italy社については、主要顧客に向けたサービスの強化を目指して新たに投資を行った。まだ工場を慎重に稼働させている状況だが、着実に初期の目的は果たしつつある。インドネシアのIADC社については足元では当初予定をした販売量には達していないものの、新たな市場で製品投入を図っていくこともあり、多少時間がかかると思うが着実に進めていきたい。
――その他事業については
ファインケミカル事業については、国内の化粧品市場はインバウンド需要を取り込むことで、16年から3年連続で過去最大を更新し、18年は初めて1兆7,000億円を突破した。19年上期は前年同期比で微増にとどまったが、引き続き国内外での日本製化粧品の人気は高く、中国では21年に向けて20%程度の成長が見込まれる。
現在、建設中のファインケミカルの工場を期限通りに竣工させ、供給体制を構築していく。
ヘルスサイエンス事業については、MCT(中鎖脂肪酸)は運動、美容の両面で注力しており、量販店やドラッグストアの店頭化の拡大が進んでいる。MCTの認知率は18年には24%だったが、19年9月時点で37.1%となった。中計において50%を目標にしており、もう一段の取り組み強化が必要となる。
結晶性油脂は異なる2つのタイプがある。1つは低融点タイプで、介護関連の学会にサンプル提示や紹介を行う中で評価が高まり、数多くの問い合わせを頂いている。加工食品に応用した場合の評価が高く、医療、介護市場での関心も高い。生産体制の構築を進めており、来春を目処に正式販売を開始する予定である。確実に需要を取り込みながら応用範囲を広げていく。
もう1つの高融点タイプは、食品用途だけにとどまらず工業用途での関心が高く、展示会などを通じてプレマーケティングを進めている。水分移行抑制、固結抑制、増粘などの機能が注目を集めており、低融点タイプと同様に生産体制を構築し着実な展開を図っていきたい。
〈「かけるオイル」市場の活性化図り、営業利益130億円、ROE7%実現へ〉
――20年の抱負をお願いします
20年は中期経営計画の最終年度になる。まずは、計画している営業利益130億円と、ROE7%をしっかりと実現したい。その一方で21年以降の道筋についても、考え方をまとめ、長期ビジョンとして示していく必要があると思っている。ESGやCSV(共有価値の創造)について当社としての考え方を整理し、できるだけ早いタイミングでお示ししたいと考えている。
もう一つは「かけるオイル」のさらなる定着化だと考えている。20年には「かけるオイル」の市場規模を400億円に拡大し、その中で当社が一定のプレゼンスを示すことを経営目標に掲げている。新製品の投入に加え、新たな価値の創出を確実に進めていくことで、かけるオイル市場のさらなる活性化を図っていく。
当社は長年にわたり啓発を図ってきた油脂の健康性が、消費者にポジティブに受け止められており、そこを一段と押し上げることが使命だと考えている。
今年は東京オリンピック、パラリンピックという大きなイベントも予定されているが、健康面を意識した食用油の価値をさらに高めていくべく、前向きな情報発信と取り組みを展開していく。
〈大豆油糧日報 2020年1月7日付〉
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