■「安定を最優先」 発展の質を向上へ
「世界情勢の変化が加速し、グローバルなリスクが増加している」「構造的、体制的、循環的要因が重なり、経済の下押し圧力が増幅している」。2020年の経済政策を決定する中国共産党と政府の重要会議「中央経済工作会議」(19年12月開催)では、このような現状認識が示された。
中国は、経済発展の質の向上や成長原動力の転換を目指しており、その一環として過去数年間で過剰生産能力の削減や金融リスクへの対策などの改革を進めてきた。その「痛み」を伴う改革により、消費や投資の伸びが減速した。
これに対し政府は、19年に合計2兆元(約31兆2200億円)超の大規模減税・社会保険料負担の軽減を目玉政策として掲げ景気の下支えを目指したが、インフラ投資や自動車販売を中心とした消費の伸びは顕著に回復したとは言い難い。
このような状況の中、米国との摩擦は貿易不均衡の問題にとどまらず、技術移転や知的財産権、ハイテク産業育成政策「中国製造2025」や合意履行の枠組みなど幅広い分野に広がった。
両国の度重なる交渉の結果、米中は昨年12月13日に経済貿易協議の第1段階合意に至った。
一方で、中国側が発表した合意内容と米国側(通商代表部)の発表を比較すると、相違点が目立つ。「食品と農産物」「貿易の拡大」については、中国側は「合意実施後に、米国から小麦、トウモロコシ、コメを輸入する」などと言及したものの、米国側が発表した具体的な購入額には触れていない。また、トランプ米大統領が「中国が多くの構造改革に同意した」と発表したが、中国側は構造改革についても具体的な説明を避けた。
さらに、今回の合意では技術覇権争いに関係が深い産業補助金や中国製造2025などについては含まれていない。これらの論点は短期的な解決が困難であると指摘されており、両国が継続的に協議するとみられる。
国内経済の減速が続き、米中関係にも不確実性が残る現状に対し、前述の中央経済工作会議では、「来(20)年の目標達成のために安定を最優先する必要がある」との方針が示された。
具体的な経済成長率目標は3月開催の全国人民代表大会(全人代=国会)で公表される見込みだ。各機関は20年の実質国内総生産(GDP)成長率は19年より減速し、5.7~6.0%と予測する。
今後、両国の第1段階合意が正式に署名され、着実に実施されれば貿易面での下押し圧力は一定程度緩和されると見込まれるが、改革の影響が残る消費や投資の回復には時間がかかりそうだ。
政府は、ばらまき型の財政政策は抑制する一方で、産業と消費の両面への波及効果を狙った先端製造業、民生分野、インフラ建設への資金供給などで、景気を下支えしつつ発展の質の向上につなげたい考えだ。(ジェトロ・北京事務所 藤原智生)
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January 03, 2020 at 03:00AM
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